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オーストラリアの鉱物資源をめぐる争い

2001年1月

 オーストラリアにおいて、ますます価値を上昇させている鉱物資源をめぐり、熾烈な争いが展開されている。
 アングロ・アメリカン社に対抗して、リオティント社が行なった鉄鉱石産出企業、ノース社の買収は、オーストラリアの鉱物資源産業でのシェア拡大をねらった多国籍資源企業による最近の画策として、顕著な実例となっている。
 オーストラリアの鉱物資源をめぐるこの闘いは、日豪間貿易、ことに鉄鉱石と石炭のそれについて、重要な意味をともなっている。豪州の鉱物資源の日本への輸出は、アジア太平洋地域の戦後史における、最も大規模な貿易関係となって今日に至っている。
 オーストラリアは、アジア、ことに日本にとって、基幹鉱物資源の安定した供給国であり、戦後日本の経済発展に大きく貢献してきた。
 今後、オーストラリアの鉱物資源は、中国、インドをも含むアジア地域の産業発展にともなって、その重要性を増すことは疑いなく、日本がそうであったように、韓国、台湾、中国、インドの鉄鋼業や重工業にとって、いっそう不可欠な存在となってゆくだろう。
 また、アジア諸国におけるインフラストラクチャーの本格的な整備と増強の必要性は、オーストラリアの鉱物資源に対する需要を、さらに引き上げさせることになるだろう。
 同時に、インドネシア、アフリカ、ロシアなどで見られる政治的な不安定性は、オーストラリア以外に供給先を求めようとする場合、その主要な障害とならざるをえない。

 安価なオーストラリア株
 オーストラリアの鉱物資源の支配権を獲得しようとする多国籍企業の動きは、オーストラリアの資源株が比較的安価と受けとめられ、豪ドル安が進行している時に行なわれた。
 ノース社の買収によって、リオティント社は世界第二位の鉄鉱石生産者となった。
 これにより、過去数十年にわたり支配的な地位を確保してきた日本製鉄企業団に対する、リオティント社の交渉力は強化されたものと思われる。日本の製鉄企業団は、いわゆる分断による支配の原則をたくみに駆使し、鉄鉱石生産を生産過剰ぎみに操ってきた。
 日本や韓国と競い合って、主要鉄鋼生産国としての中国の登場は、こうした売り手側の交渉力をさらに高めることになる。
 リオティント社はまた、小株主からコマルコ社株を買い取り、これにより、オーストラリアのアルミニウム業界における優位な地位を得、また、主にハワード・スミス社から一連の鉱山株を買い上げ、石炭業界においても、その地位を強化してきている。リオ社は、オーストラリアにおいて2000年一年間で、55億豪ドルを、こうした買収に費やしてきた。

 アングロ・アメリカン社と提携する日本勢
 日本勢は、アングロ・アメリカン社と手を結ぶことにより、リオティント社になんとか対抗しようとしてきた。アングロ・アメリカン社を後押しする三井物産は、ロスチャイルド家と長い関係を保ってきている。また、ロスチャイルド家は、アングロ・アメリカン社の8パーセントの支配力をもつ、南アフリカのオッペンハイマー家ともつながっている。
 アングロ・アメリカン社のオーストラリアにおけるねらいは、リオティント社のそれとも一致する。
 1999年、アングロ・アメリカン社は、アナコンダ・ニッケルの23パーセントの株式取得のために、3億2千万豪ドルを支払った。
 同社は、オーストラリアの鉱物資源をめぐり、過去二年間に、ノース社への失敗に終った画策も含め、しめて70億豪ドル以上を費やしてきたことになる。
 2000年8月、まだノース社をめぐる闘いのさなか、リオティント社は、アングロ社の提携企業、デ・ビアス社の先の買収応札に対抗し、オーストラリアのダイアモンド鉱山会社、アシュトン社の敵対買収をしかけていた。
 だがこのレポート作成の段階では、リオティント社は、この買収戦において、デ・ビアス社の7億5400万豪ドルの買収に、勝利を譲った模様である。
 アシュトン社は、世界最大のアーガイル・ダイアモンド鉱山の40パーセントを所有している。リオティント社は、残りの60パーセントを持っている。
 アングロ社のCEO、トニー・トラハーは、世界における総資産、350億豪ドルのうち、20パーセントをオーストラリアで所有するだろうと語った。アングロ社はいま、南アフリカの資産を売りに出している。

 販売者対購入者
 鉱物資源産業における再編は、現在、世界的規模で展開されている。その一部は、鉄鉱石生産企業間において試みられており、市場支配力を、その購入者から販売者へと転換させようとしている。
 アナリストの見方では、この業界は統合段階にあり、4ないし5社の巨大資源会社が、その商品市場と株式市場支配力とを駆使して、購買者がそうであったように、自らの地位を強めようとしている。これは、日本勢が供給源を多様化し、業界の分断化を行なってきた戦略と、まっこうからぶつかりあう。
 そのほかの展開では、シェル石油が西オーストラリアのノースウエスト・シェルフ・ガス・プロジェクトの支配権を、ウッドサイド社から買おうとしている。またシェルは、ニュージーランドのフレッチャー・チャレンジ社のガス利権買収のため応札している。ブリティッシュ石油も、ガス部門への進出を計っている。
 日本の製鉄会社は、その収益性が低く、その他に選択肢はない以上、その市場支配力を維持しようと構想しているにちがいない。

 日本の歴史的役割
 戦後、日本の製鉄産業は、自らオーストラリアの鉄鉱石産業の育成を計ってきた。日本の製鉄会社団は、商社を使って、鉄鉱石の生産のために、オーストラリアの生産者の国際的な資本、技術などの提携先を仲介する援助をしてきた。こうして有利な鉄鉱石ビジネスに進出してきた外国企業は、米国のカイザー製鉄、アマックス社、クリーブランド・クリフス社、そして英国のリオティント・ジンク社などである。
 オーストラリア産の鉄鉱石は、日本向けのその他のどの主要供給先を含めても、最も安値であったにも拘わらず、日本勢は70年代より、ブラジルやインドの競合先を開発し、その供給源を分散させてきた。
 日本側はこの数箇月間、オーストラリアのピルバラ地区の三社の鉄鉱石供給元を維持しようと厳しく争ってきた。その日本側の敗北の結果、リオテイントは買手である日本市場の33パーセントを支配することとなり、BHPの24パーセント、ブラジルCVRDの16パーセンのいずれをも上回る。
 その供給元に対する前例のない法的対処のなかで、新日鉄は西オーストラリアのピルバラ地区の鉄道建設案をほごにするリオ社の計画をめぐり、法廷での争いに同社を引き出そうと圧力をかけている。リオ社のノース社の買収により、ピルバラのローブリバー鉄鉱山の過半数の利権をリオ社は握ることとなった。ロールリバー社は、鉄道建設に5億豪ドルをつぎこむ計画でいたが、リオ社は、既設の鉄道を利用することで、コスト削減を計るつもりである。

 BHPが次の標的か
 BHPとリオティントが提携を結び、将来、販売についての合意に至ることはありうるのか?
 BHPは、次に考えられる合併あるいは買収の標的である。BHPの買収は、リオティントにピルバラ地区の一層の支配力を与えるとともに、それは、オーストラリアの石炭を統合する機会と、さらに、チリにある世界最大の銅鉱山を支配することにも通ずる。
 リオティントにとってこの先の懸念は、日本側が同社との鉄鉱石もしくは石炭の契約を、引き下げる報復処置に出る可能性である。
 だが、同社はそれをあまり心配していないであろう。というのは、中国、韓国、台湾という成長市場をにらんでいるからである。
 リオ社はまた、インドにおいて、日本の「鉄の同盟」に対する闘いにも取りかかっており、日本が支援するプロジェクトと競合する可能性のある合弁企業を企図している。
 オーストラリアン・ファイナンシャル・リビュー紙によると、ほんの十年前、日本の製鉄会社団は、リオティントとBHP両社の市場価値合計の七倍の価値があった。今日、オーストラリアのこの巨大資源会社二社の価値合計は、日本の製鉄会社団のそれの、ほぼ二倍に達している。

 日本側の対抗戦略
 日本の製鉄企業同盟の対抗戦略は、おそらく、製鉄会社間の結束を強化することであろう。韓国の浦項総合製鉄と新日鉄とは、わずかながらすでに株式の持ち合い関係にあり、原料の共同調達について、原則的合意に至っている。
 日本側の、ことに新日鉄のスポークスマンは、リオのノース社の買収について、不満を公表している。だが、他社は明瞭な態度を表わしていない。
 たとえば、台湾の中国製鉄の会長は、もし、鉄鉱石生産者がその顧客と利益を共有できるなら、供給側の統合は必ずしも悪い考えではない、と語っている。
 もうひとつの重要な存在、中国の態度と役割は決定的である。中国の鉄鋼消費量は、2001年中に、北米やEUのそれを上回ると予想されている。

 大英帝国の伝統
 英国は、その歴史的経験のなかから、世界の状況を克明に分析、そして実行する力を備えてきた。
 大陸の辺縁に位置するという点では、英、日にともに共通するところは多いが、英国の場合、ヨーロッパ大陸との離りはわずか50キロメートルほどで、歴史的に、大陸との交流・拮抗関係を深いものとさせてきた。
 日本の場合、アジア大陸との距離は遥かに大きく、むしろ、日本は、大洋によって隔てられ、あるいは守られて位置してきたにも等しく、大陸との関係は限定されたものとなった。その結果、日本の文明の発達は、英国の大陸との関係と比較して、より孤立し、独特なものとなってきた。
 こうした英国の文明発達の遺産として、その企業力への反映という面では、シェル石油、ブリティッシュ石油、リオティント・ジンク社という三大鉱物資源企業が、その輝かしい伝統を代表している。
 すなわち、こうした企業とは、オランダのユダヤ商人との同盟とインドネシア支配によるシェル石油、英国支配階級の粋であるダーシー卿によって創設されたブリティッシュ石油、そして、スペインに対する勝利を意味するリオティント・ジンク社である。
 これらの企業は、大英帝国以来の産業発展を、植民地獲得とその運営を成功させ、その原料確保という面で、一世紀以上にわたって戦略的に支えてきた。
 今日の世界経済のグローバル化で、こうした伝統的な力は、新たな段階に入っている。
これらの企業の、アジアへの関心は弱まるところはなく、その歴史的経験は、さらに大きな機会の開発をもとめて、旺盛に発揮されるであろう。
 ことに鉱物資源確保という面において、日本企業には、こうした英国企業に比較し、その経験の厚みに、明らかな差があるのは否めない。

 最新の展開(2001年1月9日時点)
 2000年12月末、リオティントの子会社(コール・アンド・アライド・インダストリーズ)は、アメリカのピーボディー・グループより、ニュー・サウス・ウェールズ州ハンターバレーにある五つの露天掘炭鉱を買収し、リオテイント・グループは、BHPをしのいで、オーストラリアの石炭業界では最大の産出元に浮上した。
 この買収によって、オーストラリアの石炭業界では、日本の製鉄企業と電力会社の連携によって抑えられてきた石炭輸出契約価格が、1996年以来の引き上げに転じられるとの期待が広がっている。

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